骨盤骨を骨折後に変形した場合(骨盤骨変形の後遺障害)

   交通事故で傷害を負い、治療を続けたが、完全に治ることがなく、後遺症として残存してしまうことがあります。その後遺症の中で、交通事故によって身体の特定の部位が変形してしまったような場合について、自賠責保険では、脊柱の変形や、その他体幹骨の変形を後遺障害として認めています。その他体幹骨とは、鎖骨、胸骨などのことであり、骨盤骨も含まれます。

1 骨盤

  骨盤は、左右一対の寛骨とそれらの間にある仙骨、尾骨で形成されています。寛骨は、腸骨、坐骨及び恥骨で構成されています。骨盤は男女差が顕著であり、女性の骨盤は産道としての役目があるため、男性の骨盤に比べて横に広い構造になっています。

  歩行者が自動車にはねられるなど、強い衝撃を受けた場合に骨盤骨折は生じます。

2 骨盤骨の変形

  骨盤骨が変形するのは、下記①②の2パターンがあります。

 ①骨盤骨折による変形

 ②腸骨採取術をしたことによる変形

  腸骨採取術とは、腸骨の一部を採骨し、それを他の骨欠損部などに移植する手術のことを言います。腸骨採取術をしたことによる変形も、交通事故の後遺障害として認定される可能性はありますが、ここでは①の骨盤骨折による変形を主に念頭においています。

3 後遺障害

(1)著しい変形の場合

   骨盤骨が骨折後に、著しい変形をしている場合には、自賠責後遺障害等級12級5号に該当する可能性があります。著しい変形とは、他の体幹骨(鎖骨や肋骨等)のケースと同様ですが、裸体になったときに変形が明らかに分かるものを言い、Ⅹ線ではじめて発見できるものは含まれません。

(2)痛みや痺れといった神経症状

   著しい変形とはいえなくても、痛みや神経症状が残存している場合には、自賠責後遺障害14級9号や12級13号に該当する可能性があります。

(3)変形によって正常分娩が困難になった場合

   骨盤骨の変形によって、産道が狭くなり正常な分娩が困難になった場合には、自賠責後遺障害11級10号の可能性があります。

(4)運動障害

   骨盤骨が変形して、股関節に影響を与えることで可動域に制限が生じた場合には、その運動障害の程度によって、後遺障害12級7号等が認定される可能性があります。

(5)下肢の短縮

   骨盤骨が変形することで、下肢が短縮しているのと同様の状態が生じることがあります。下肢の短縮障害との関係では、上位等級が認定され、併合されることはありません。例えば、東京地裁平成25年6月24日判決(平24(ワ)22264号)では、右骨盤骨の著しい変形につき12級5号にする該当との判断にあたって、右下肢の短縮につき13級8号に該当するものの、右骨盤骨の変形を複数の観点から評価していると捉えられることから、上位等級である12級5号として評価するとしています。

4 裁判例

  骨盤骨の著しい変形が生じる等した場合に、他の体幹骨と同様に労働能力喪失率などが争われること可能性がありますが、通常の場合、他の後遺障害が残存しているケースが多く、骨盤骨の著しい変形の後遺障害についてだけ争点になった裁判例は少ないです。

(1)名古屋地裁平成15年12月19日判決(交民 36巻6号1639頁)

 名古屋地裁平成15年12月19日判決は、交通事故による後遺障害として12級5号のみが残存した認定された事案であり、後遺障害逸失利益が争点になりました。

 上記名古屋地裁判決は、交通事故の被害者が公務員であること、受傷後も特段収入の減少はなく、仕事面でも同僚に重量物を運んでもらったりなどの配慮を受けていること、現在までのところ昇格で不利益を受けることもないことや、今後解雇等されることがないであろうこと等を考慮して、後遺障害逸失利益を認めませんでした。

  そして、交通事故の被害者の職場での不自由、昇格面や長期的将来における不安等の諸問題については、後遺障害慰謝料で考慮することが相当として、通常280万円程度であるところを600万円と認定しました。

(2)東京地裁平成13年12月18日判決(交民 34巻6号1624頁)

 東京地裁平成13年12月18日判決は、交通事故で、顔面挫創による外貌の醜状障害と骨盤骨の変形の後遺障害が残存した事案です。上記東京地裁は、ます、後遺障害逸失利益の算定において、外貌の醜状障害は労働能力に影響はないとしました。 

   そのうえで、仙骨骨折に伴う骨盤骨の変形障害により14%の労働能力を喪失したものとして、交通事故に遭わなければ稼働し得たと考えられる18歳から67歳までの49年間について逸失利益を算定するのが相当としました。

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(弁護士中村友彦)

 

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