交通事故は、大小含めて毎日発生しており、その中でも重大なものとして死亡事故があります。
総務省統計局の統計によれば、平成25年度に起きた交通事故の死亡事故件数は、4373件で、大阪はそのうち179件(全国7番目に多い)ということです。飲酒運転の取り締まりが厳しくなったことなどが関係するかもしれませんが、1日に平均すると約12人、時間に換算すると2時間に1件も起こっていることになります。
死亡事故は、普段元気に生活していた人が、家族との理不尽な別れを強いられるものです。交通事故の被害者だけでなく、家族などの周囲の人々にも多大な影響を与えます。また、事故の被害者は亡くなっているわけですから、加害者が悪質だと、死人に口なしで好き放題に言われるかもしれません。損害賠償の問題だけでなく、刑事事件や相続の問題とも関連してきます。
死亡事故は、遺族への影響も大きく、様々な法律的な分野に関わってきますから、専門家である弁護士に相談してみるべきです。中途半端な対応をすると後悔することになるかもしれません。
1 損害賠償の問題
被害者が亡くなったとしても、遺族(相続人)は被害者の損害を加害者に対して、賠償請求をすることができます。また、一定の身分関係にあった遺族は、死亡事故により負った自身の精神的苦痛を損害として請求することができます。
しかし、損害自体が高額になることから、過失割合など争いになることが多いです。
2 刑事的な問題
人の死という重大な結果が生じた場合、自動車運転過失致死罪や業務上過失致死罪に加害者が問われ、刑事裁判になることが大半でしょう。その際、加害者が、自分の罪を少なくしようと、被害者が死んでいることをいいことに好き放題主張するかもしれません。そのような場合に、一定程度、遺族が刑事裁判に関わる方法として被害者参加制度があります。
3 相続的な問題
人が亡くなった場合に避けることができないのが相続問題です。交通事故による損害賠償請求権自体も相続財産に入りますが、それ以外の不動産等の相続財産の処理の問題が発生します。適切な対応を取らなければ、死亡事故による遺族の悲しみに加え、家族の崩壊を招きかねません。
交通事故だけでなく何でもそうですが、我慢することだけが最善ではないと思います。死亡事故等で遺族が高額の損害賠償請求することがニュースで流れ、それに対して批判がなされたりすることもあります。しかし、遺族が感情を吐き出し、前へ進むために訴訟等を利用することは決して悪いことではありません(もちろん、不当訴訟になってはいけませんが)。突然に起こった理不尽に対し、遺族が自分の中に感情を溜め込んでしまうより、すべて吐き出してしまった方が、後悔をすることはないでしょうし、それもまた民事訴訟の機能の一つだと思っています。(弁護士中村友彦)