交通事故における被害者参加制度(刑事裁判)

  交通事故は毎日沢山起こっており、その大半は不起訴処分や罰金刑で終わります。しかし、交通事故により、被害者が重大な後遺障害が残る大怪我をしたり、死亡したりした場合は、加害者は起訴され正式裁判にかけられることが多いです。

刑事裁判は、民事裁判と異なり加害者を処罰する制度ですから、被害者は手続きの蚊帳の外に置かれ、遺族等は悔しい思いをすることになることがあります。

 しかし、一定の重大な犯罪では被害者は手続きに参加することが可能です。交通事故の事案では、危険運転致死傷罪や自動車運転過失致死傷罪が対象になります。交通事故の加害者が、被害者が手続きに参加していないことや死亡事故で参加できず死人に口なし状態であることに乗じて、好き勝手に述べていることについて、被害者や遺族が関与することができます。

 

1 被害者参加制度

 ①公判期日における在廷

 ②検察官への意見

 ③情状に関する事項についての証人の供述の証明力を争うために必要な事項についての証人尋問

 ④被告人質問

 ⑤弁論としての意見陳述(情状だけでなく、量刑に関する意見も言うことができます)

 

2 交通事故で被害者参加制度が利用できる事件

 ①危険運転致死傷罪

 ②自動車運転過失致死傷罪

 ③業務上過失致死傷罪(自転車など)

 ④自動車等を使用して故意に人を死傷させた罪(殺人罪等)

 なお、未遂(完遂にならなかったもの)であっても対象になります。

 

3 被害者参加を利用できる者

  被害者参加制度で刑事裁判に参加できるのは、以下の者です。

 ①被害者

 ②被害者が死亡した場合や心身に重大な故障がある場合における配偶者、直系の親族(母親等)、兄弟姉妹

 ③被害者の法定代理人

 ④被害者等から委託を受けた弁護士

 

4 交通事故の被害者等が被害者参加制度を利用するための手続き

 被害者等が、起訴後から手続終結までの間に、検察官に対し参加の申出

               ↓

 検察官が、意見を付けて裁判所に対し、被害者等による参加の申出があることを伝える

               ↓

 検察官からの通知を受けた裁判所が、被告人または弁護人の意見を聴く

               ↓

 裁判所は、犯罪の性質、被告人との関係その他の事情を考慮し、相当であると認めるときに決定により参加を許可

 

5 国選被害者参加制度

  被害者参加制度を利用して刑事裁判に参加するのは、法律の専門家でなければ困難です。刑事裁判に関わるのは、専門家である弁護士ですから、被害者参加制度については弁護士を利用するべきです。その際の費用については、被害者参加弁護士を選任するだけの資力がない場合に備えて、国選被害者参加制度が用意されています。

(1) 国選被害者参加制度

   経済的に余裕がない被害者参加をしようとしている者が、被害者参加弁護士による援助を受けることができるようになるため、裁判所が被害者参加弁護士を選定し、国がその費用を負担(立替)する制度です。

(2) 利用要件

   被害者参加人の資力から、問題となっている犯罪行為を原因として、選定請求の日から6か月以内に支出することとなると認められる費用の額(治療費等)を差し引いた額が200万円未満であることです。あくまでもお金がない人のための制度ですから、一定の制限があります。

(3)手続き

   法テラス(大阪の場合は、法テラス大阪や法テラス堺)に必要書類を提出して審査を受け、被害者参加弁護士の選定を受けます。

 

 なお、当事務所が、国選被害者参加制度を利用せずに、被害者参加制度に関して活動する場合は、交通事故の民事事件とは別途費用の方が発生する可能性がありますが、その額については応相談です。

 

6 被害者参加人が刑事裁判で上記1に関することを行う手続き

  被害者参加制度による参加が認められているのでしたら、刑事裁判の公判期日に在廷することが可能です。それ以外(上記1の①から④)については、検察官に対して申出をします。申出を受けた検察官は、意見を付けて裁判所に通知し、裁判所は被告人や弁護人の意見を聴いて、許可するかどうかを判断します。

 

7 被害者参加制度の根拠

  被害者参加制度は、犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律(犯罪被害者保護法)に定めがあります。平成19年に犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律が成立し、同法により、刑事訴訟法、民事訴訟法及び犯罪被害者保護法等の一部が改正されて、損害賠償命令制度等と共に創設され、平成20年12月1日から始まりました。刑事裁判は、被告人側と検察官側の二当事者対立構造を基本とするものであるとして、被害者参加制度の創設には強い批判がありました。しかし、現在の被害者参加制度は、従来からの二当事者対立構造を変えるものではなく、被害者等が参加や参加後の刑事裁判上可能な行為を行うには、検察官に申出をしなければなりません。

  

8 手続参加の前提として記録の閲覧・謄写

  被害者参加制度を上手く利用するためには情報の収集は不可欠です。交通事故の刑事処分の内容により、刑事記録の閲覧・謄写の方法が変わります。被害者参加制度は、下記「(3)正式裁判になるほどの重大な交通事故の場合」にあたります。

(1)不起訴になる交通事故の場合

   大半の交通事故は不起訴処分になり、被害者が刑事記録を取得するために検察庁に請求すれば、実況見分調書が開示され、閲覧・謄写をすることが可能です。事件の内容によっては、信号のサイクル表等が開示されることもあります。

(2)略式命令で罰金刑になる交通事故の場合

   事故態様や、被害者の傷害が大きいものの場合に略式命令で罰金刑になることがあります。この時には、罰金刑が出て、2週間の期間を経て、それが確定(上訴できないこと)すれば、刑事記録を取得するために検察庁に請求すると、実況見分調書だけでなく、被害者及び加害者の供述調書が開示され、閲覧・謄写をすることが可能です。

(3)正式裁判になるほどの重大な交通事故の場合

①被害者等や委託を受けた弁護士以外

 被害者等や委託を受けた弁護士以外は、事件の記録を閲覧・謄写することができるようになるのは、刑事裁判の判決が確定してからです。この時に開示されるのは、検察官により厳選された証拠が開示されます。但し、閲覧については、第1回公判期日前でも、刑事訴訟法47条但し書きの運用により可能なことがあります。

②被害者等や委託を受けた弁護士

 第1回公判期日の前では、刑事訴訟法47条但し書きの運用により事件記録の閲覧をすることができます。第1回公判期日後は、犯罪被害者保護法第3章の規定により閲覧および謄写をすることができます。

 

9 被害者参加人を補助する制度

  被害者参加人にとって、刑事裁判に参加することについて、不安や緊張を覚えるのが通常でしょう。そのような、被害者参加人を補助する制度があります。

(1)付添人

   被害者参加人の不安や緊張を和らげるような者が、被害者参加人に付き添うことを認めるものです。付添人は、被害者参加人に不当な影響を与えてはいけません。

(2)遮蔽措置

   被告人や傍聴席から、被害者参加人が見えないように遮蔽を置くものです。加害者に見られながらでは、被害者も話しにくいこともあるでしょうし、傍聴席にいる見知らぬ人たちの前では、極度に緊張してしまうこともあるでしょう。遮蔽措置をとれば、人の視線は気にならなくなりますから、被害者参加人にとっては大変有用な制度です。

 

10 被害者参加制度における意見陳述と刑訴法292条の2の意見陳述

  被害者参加制度において上記1⑤が一番被害者にとって行いたいことだと思われますが、被害者が意見を陳述することができるのは、刑事訴訟法292条の2の意見陳述でも可能です。しかも、刑事訴訟法292条の2は、裁判所の許可も必要ではありませんし、情状証拠として扱われます。一方で、被害者参加制度における意見陳述は、情状証拠にもなりませんが、求刑の意見を述べることができます。交通事故の被害者等としては、両方の利用を検討するべきでしょう。

 

11 被害者参加等旅費支給制度

   被害者参加をしたくても、裁判所が自宅から遠く、交通費がかかったり、泊りがけになり宿泊費が必要になるなどの経済的な事情ですることができないという場合がありえます。そこで、被害者参加人は、所定の手続きを行えば、交通費、宿泊費、日当が国から支払われることになっています。

(1)交通費

  最も合理的な経路・交通手段で計算された額が支給されますので、必ずしも現実にかかった費用が支給されるわけではありません。例えば、電車で行けば200円で行けるのに、バスを乗り継いで400円かかったような場合には200円しか支給されません。必要があれば、新幹線代や飛行機代も支給されます。

(2)日当

  一日あたり1700円です。

(3)宿泊費

  宿泊費は、裁判所が遠方で宿泊しなければいけないと認められる場合に支給されます。現実にかかった費用が支給されるわけではありませんが、友人宅等に泊まり、宿泊費の支出がなければ支給されません。支給額は、裁判所の場所によって異なり、7800円又は8700円が支給されます。

(4)交通費が支給されない場合

①証人として出頭するので、裁判所から証人旅費等の支給がある場合

②傍聴席で傍聴していた場合

③必要書類の提出がない場合

 

12 被害者参加制度の利用で要した弁護士費用を加害者に負担させることができるか

   被害者参加制度の利用にあたっては、刑事裁判は専門家である弁護士を委任しないと上手く行かないことが多いでしょう。このときにかかる弁護士費用を加害者に負担させることができるのでしょうか。

(1)弁護士費用相当額1割

   交通事故訴訟の損害賠償においては、損害額の約1割が弁護士を使用せざるをえなかったことの損害として加害者に負担させることが認められています。最高裁昭和44年2月27日判決(民集23巻2号441頁)は、諸般の事情を考慮して、相当と認められる弁護士費用を、相当因果関係のある損害であるとしています。

(2)被害者参加制度にかかる弁護士費用

①東京地裁平成24年11月28日判決(自保ジャーナル1891号83頁)

 東京地裁平成24年11月28日判決の事案は、被害者参加手続に要した弁護士費用が請求されましたが、「関連刑事事件の被害者参加手続に要した弁護士費用は,被害者参加制度が民事損害賠償の前提となっているわけではないから,本件事故と相当因果関係ある損害と認めることはできない。」として否定されました。

 交通事故の死亡事故や重大事故の被害者等であっても被害者参加制度を利用するのはまだ少ないですし、あくまで民事と刑事は別であると考えますと上記東京地裁判決は妥当だといわざるをえません。

 

 当事務所が、交通事故において被害者参加制度の利用を受任する場合には、民事事件との兼ね合いで費用の方は応相談となりますので、一度相談してみてください。(弁護士中村友彦)

13 関連コラム

損害賠償命令制度を交通事故事件で使用

 

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