むち打ち症における労働能力喪失期間の制限(交通事故による後遺障害の損害)

   交通事故により後遺障害が残存した場合、被害者は交通事故の損害として、後遺障害逸失利益が認められます。後遺障害逸失利益というのは、基礎収入(基本的に症状固定時の給与所得など)に労働能力喪失率と、労働能力喪失期間(67歳まで)に対応するライプニッツ係数をかけることで計算がされ、事案によっては多額になり争いになります。

 しかし、むち打ち症(外傷性頸部症候群・外傷性腰部症候群)の場合は、上に述べた後遺障害逸失利益の計算方法を若干修正した方法がとられています。

1 むち打ち症(外傷性頸部症候群・外傷性腰部症候群)における後遺障害

  むち打ち症は、様々な呼び方がされ、外傷性頸部症候群、頸椎捻挫、頸椎挫傷、外傷性腰部症候群、腰椎捻挫等で診断書に書かれます。交通事故で問題となる後遺障害で比較的に多いのは、このむち打ち症です。むち打ち症の後遺障害は、主に二つの可能性があります。

(1) 後遺障害等級第14級10号

   医学的に証明しうる精神神経学的症状は明らかでないが、医学的に自覚症状が説明できるような場合です。後遺障害慰謝料として110万円(大阪地裁基準)、労働能力喪失率は5%とされます。

(2) 後遺障害等級第12級12号

   局部に頑固な神経症状を残すものとして、自覚症状が他覚的な所見で裏付けることができるような場合です。ここでいう他覚所見とは、画像等で異常があるということですが、画像等で異常があるからといって他覚所見とされるとは限りませんので注意が必要です。後遺障害慰謝料として280万円(大阪地裁基準)、労働能力喪失率として14%とされます。

2 むち打ち症の場合の労働能力喪失率の低減

  上記述べましたように、後遺障害等級12級なら14%、後遺障害等級14級なら5%の労働能力喪失率が認められるはずですが、むち打ち症の場合、裁判ではそれより低い労働能力喪失率しか認めてくれないことがあります。

3 労働能力喪失期間の制限

  労働能力喪失率が下げられることは、そう多くはないですが、労働能力喪失期間については、むち打ち症の場合に制限されるのが普通です。大阪地裁では、一般的に以下のように制限しています。

  

後遺障害等級

労働能力喪失期間

第12級程度

5年から10年

第14級程度

2年から5年

  上記のようにむち打ち症で労働能力喪失期間が限定されるのは、神経症状が交通事故の被害者の神経的なストレスが影響している可能性があることや、一定期間が経過すれば改善しうるという考えがあると思われます。ただ、下記述べるように、また別の交通事故にあってしまった場合に問題があります。

4 再度の交通事故にあった場合の問題

   自賠責保険では一度後遺障害の認定がされると、後で交通事故にあい、また同一部位をむち打ち症になったとしても、既存障害があるとして、後遺障害の認定をしてくれません。したがって、二度目の交通事故によるむち打ち症の後遺障害で、労働が制限されたとしても、後遺障害逸失利益の補償は原則ありません。

   この取扱いは、前回の交通事故による後遺障害で労働能力喪失の補償がされているなら分かりますが、前回の交通事故の補償では労働能力喪失期間の制限されているのですから問題な気がします。

   本来むち打ち症は、改善するのであるのに(医学的には不明ですが、裁判実務は期間制限している以上そのように考えているのでしょう)、後遺障害慰謝料を認めているのであるから、労働能力喪失期間の制限についてはバランスを取る意味で妥当だということでしょうか。理論的な面での深まりが求められるところです。(弁護士中村友彦)

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