交通事故で傷害を負った場合、病院で治療を受けることになります。その治療にかかった費用は、加害者に対して損害賠償請求することができます。病院によっては、加害者の保険会社に請求してくれますが、病院がそのような対応をしてくれなかったり、事故態様等に大きく争いがある場合などで保険会社が治療費の支払いに応じてくれないことがあります。その場合、一旦、被害者が支払い、後で加害者に請求するという形になります。但し、加害者の自賠責保険の仮渡金、内払制度を利用する方法もあります。
1 健康保険への切り替え
交通事故の被害者が、まず自己の負担で治療費を支払う場合、必ず健康保険に切り替えてください。自由診療は健康保険を使用する場合に比べて高額になるのが一般的ですから、自己負担が重くなります。治療費の額は、通常、診療報酬明細書等で証明することになります。
2 治療費の制限
また、交通事故により負った傷害のために長く病院に通院していたとしても、治療費の全額が請求できるとは限りません。平成16年7月30日大阪地裁判決(交民37巻4号1048頁)のように、3年4ヶ月の治療期間を9ヶ月に制限し、約23万円の治療費を請求していたにもかかわらず約12万円分しか認めないなど、請求できる治療費が制限されることがあることに注意してください。
交通事故の被害者本人が加入している人身傷害補償保険など、自己の保険を使用して治療費を支払う方法もありますが、損益相殺により、人身傷害補償保険から給付を受けた分については、加害者に請求できないこともあります。(弁護士中村友彦)