交通事故の態様は様々です。狭い道路を擦れ違おうとして上手く行かず接触事故にあったり、交差点を渡ろうとしたところを衝突事故にあったりなど色んなケースが考えられます。そのような交通事故の一態様として、追突事故があります。例えば、信号待ちをしていたところ、後ろから前方不注視の車両が突っ込んできたというものです。当事務所代表の弁護士井上も昨年追突事故にあいました(詳しくは弁護士井上元の交通事故体験記へ)。
1 追突事故
追突事故といっても、その態様自体も、前の車両が走行や信号待ちしていたり、駐車中に後続車が追突してしまったりと分かれますが、ここでは、駐車車両への追突事故は扱いません。前を走行する車両が走行していたり、信号待ちで一時停止していた場合の追突事故を前提とします。
2 追突事故にあった場合にまずやるべきこと
(1) 警察への届出
警察に届けましょう。追突事故の程度にもよりますが、交通事故時には体の調子に変化がなくても、後から異常が出てくることがありますので、体に異常があれば、直ぐに病院で診断書を取得し、人身事故の届出を行いましょう。
物損事故の扱いのままだと、後で傷害や後遺障害に関する保険金を請求する時に面倒ですし、事故態様で争いになった時に、重要な証拠になる実況見分調書が開示されません。
(2) 実況見分への立会
実況見分とは警察が行う現場検証のことであり、これにより作成された実況見分調書は事故態様の極めて重要な証拠になります。
決して加害者だけが立ち会いで作成されるといった事態は避けてください。加害者が自己の責任を軽減するために、都合のよいことをいい、交通事故の被害者が不利な立場に立たされるのはよくあることです。
もし、救急車で運ばれる等して、実況見分に立ち会えなければ、後日(なるべく早く)警察に言って、被害者立ち会いのもとでの実況見分をお願いしてください。
(3) 証拠保全
加害者の確認は当然のこと、目撃者を捜したり、事故車両の写真を撮影するなど、後日の紛争に備えて証拠を保全してください。
3 適切な通院・治療
体に異常を感じたら、すぐに病院で見てもらって下さい。交通事故の中で特に追突事故は、後方から意識せずいきなり衝撃を受けたりする結果、外傷性頸部症候群(むち打ち症や頸椎捻挫とも言われたります)や外傷性腰部症候群(腰椎捻挫)になることが多いです。交通事故にあってすぐに体に異常が感じなくても、外傷性頸部症候群等は一般的に数日経って症状が出てくることも知られていますから油断してはいけません。体の異常を感じて我慢していて、交通事故から時間がたって病院へ行っても、後日その異常が交通事故と因果関係を有するのか争われることもよくあります。
4 追突事故の過失割合
基本的に、追突した後ろの車両に前方注視義務や車間距離不保持義務があるとして、追突された前の車両には過失はないとされます。したがって、信号待ちしていたら、後方の車両に追突されたようなケースでは、後方の車両の過失が100となります。
ただし、事情によっては前の車両にも過失が認められることがあります。
(1) 道路交通法24条に前の車が反している場合
道路交通法24条に前の車が違反している場合とは、いきなり理由もないのに、急ブレーキをかけて前の車が停止したような場合です。このような場合、基本の過失割合は、前の車に30%程過失が認められることになります。
なお、道路交通法24条は、「車両等の運転者は、危険を防止するためにやむを得ない場合を除き、その車両等を急に停止させ、又はその速度を急激に減ずることとなるような急ブレーキをかけてはならない」としています。
(2) 前の車の制動灯が故障等している場合
前の車の制動灯が故障等してよく見えなければ、後の車両は、前の車の速度や停止しているか等を認識しづらいですから修正されます。事案によりますが、10%から20%程度修正されます。
(3) 前の車が酒気帯等で正常な運転ができていない場合
前の車が酒気帯等で正常な運転ができておらず、これが一因で交通事故にいたったと言えるような場合には、過失割合は修正されます。その修正の程度は事案によることになります。
5 損害賠償について
追突事故の場合、過失割合は基本的に100対0になることが多いでしょうから、この点が争いになることは少ないでしょう。しかし、外傷性頸部・腰部症候群では通院期間が長くなったような場合に、加害者加入の保険会社から治療費の支払いを打ち切られたり、休業損害で揉めるなどはよくあることです。後日思わぬ事態になって後悔する前に、なるべく早く専門家である弁護士に相談をすることをお勧めします。(弁護士中村友彦)