交通事故で、車両が損害を受けたような場合、通常、加害者が加入している任意保険から交通事故による損害の補償を受けることになります。しかし、加害者が、物損に関して任意保険に加入していないといった事情から、被害者が自分の車両保険等を使用せざる得ない場合があります。しかし、特約で被害者の過失が0であれば保険料が上がらないとされている保険もありますが、そのような事情がない場合、保険料が増額することになりますが、これが損害と認められるかが問題となります。
1 保険料の増額を交通事故の損害と認めた事例
横浜地裁昭和48年7月16日判決(交民6巻4号1168頁)では、交通事故の発生のため保険料の割引がなくなり、金1万5571円余分に支払わざるを得なくなり同額の損害を被ったことが認められるとして、保険料増額分を交通事故の損害と認めました。
2 保険料の増額を交通事故の損害と認めなかった事例
東京地裁平成13年12月26日(交民34巻6号1687頁)では、「原告が自身の加入する車両保険金を受領して早期の被害回復を図るか、被告から適正な損害賠償金を得て被害回復を図るかは、原告自身の選択の問題であって、前者を選択した結果、保険料が増額したとしても、これをもって、本件事故による損害と認めることはできない。」として、保険料増額分を交通事故の損害と認めませんでした。(弁護士中村友彦)