交通事故に合い、治療のために病院へ通院する等する必要があったため、仕事を休んだ場合、休業損害が問題になります。通常、基礎収入に現実に休業した期間を乗じて休業による損害は計算されますが、それ以外に休業によって仕事の納期が遅れ注文主から契約を打ち切られたような場合に、得られなかった利益が交通事故による損害と認められるかが問題となります。
東京地裁平成18年7月19日判決(交民39巻4号1001頁)は、交通事故で被害者が、頭部・顔面打撲、頚部擦過傷、右下腿打撲擦過傷、頚椎・腰椎捻挫、右側顎関節症(歯牙損傷、咬合不全)等の傷害を負い、通院をしていた事案です。上記東京地裁判決は、企画、演出等の映像に関わる業務を行っている被害者の損害の算定に当たり、被害者は、交通事故による傷害に基づく疼痛で制作会社から依頼されたDVD制作のためのロケハン、シナリオ台本作成等を予定時期までにできなくなって契約を解除されたことを認め、契約解除は交通事故に基づく傷害に起因するといえるから、各損害につき交通事故との相当因果関係が認められるとして、制作会社から損害賠償請求を受けたロケハン費用の48万41円、同社から支払われなかった演出料から負担を免れた費用120万円を控除した1080万円、同社から支払われなかった著作権料30万円について損害と認めました。なお、上記の契約解除による各損害は、特別損害であり、予見可能性がなかったのであるから、交通事故の損害として相当因果関係が認められないという被告の主張に対して、記東京地裁判決は、各損害の内容から特別損害といえるものではないとして排斥しました。 (弁護士 中村友彦)