生活保護受給者の休業損害(家事労働)

 交通事故により負傷し、仕事を休まないといけなくなった場合、休業損害が認められる可能性がありますが、その内容は交通事故の被害者の属性等により多様です。生活保護受給者の場合、労働ができないことから生活保護を受けている側面がありますので、一般的に休業損害は認められません。しかし、生活保護受給中の交通事故の被害者が、家事労働をしていた場合には休業損害が認められる可能性があります。

1 家事労働

 家事労働を行う者、家事従事者は働いて収入を得ているわけではありませんので、交通事故で家事が出来なくなった場合現実の収入に減額が生じることはありません。しかし、家事従事者が家事労働をできないことで、他の人が代わりに負担を負うことになるなどするにもかかわらず、加害者が何らの責任を負わないというのも不合理です。

 家事従事者の行う家事労働自体は、経済的な評価は可能ですので、交通事故で家事ができなくなった場合には財産的損害があるとして、賃金センサスを基準に休業損害が認められています(最高裁判所昭和50年7月8日判決・交民8巻4号905頁)。生活保護受給者の場合にも、家事労働の休業損害が裁判例において認められているものが散見されます。 

2 裁判例

 (1) 大阪地方裁判所平成23年12月13日判決(交民44巻6号1574頁)

 大阪地方裁判所平成23年12月13日判決は、自転車を走行中に、歩行者の傘が前輪にひっかかり、転倒した結果、腰椎圧迫骨を生じるなどした交通事故の事案です。被害者である原告は、生活保護を受給していました。

 上記大阪地裁は、「原告は、生活保護を受給していたものであるが、証拠(甲14,原告本人)によれば、夫とBと同居して家事を担ってきたものであるところ、家事従事者の家事労働が財産上の利益を生じうるものであり、金銭的評価が可能であることから、休業損害を観念することができる。」とし、入通院状況から、入院期間82日間については100%,その後は前記症状固定日である平成21年3月23日までの120日間については平均30%の就労制限を受けたものとして、休業損害を算出するのが相当としました。そして、賃金センサス平成20年第1巻第1表女性企業規模計・学歴計70歳以上の平均年収304万2500円の80%相当額である243万4000円を基礎収入として、休業損害78万6882円を認定しました。

 (2) 神戸地方裁判所平成15年2月20日判決(自保ジャーナル1548号11頁)

 神戸地方裁判所平成15年2月20日判決では、生活保護を受けていた主婦について、無職者で現実に収入が減額したとは言えないが、同時に主婦として家事労働に従事していた者でもあるとして、休業損害を肯定しました。賃金センサス・女性・学歴計・全年齢の315万5300円を基礎収入としています。

 

 生活保護を受けている場合、損害賠償金を受領しても、生活保護との関係でメリットはないことが多いです(役所に生活保護費を返還するないし、生活保護が打切りとなる)。しかし、一時的に生活保護を受けていただけや損害賠償金の金額が高額のときなどの場合、生活保護との関係を考えても、きっちりと損害賠償金を受領した方がメリットのある場合もあります。

(弁護士中村友彦)

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