日本で交通事故にあうのは、日本人に限りません。日本に旅行中であったり、留学や仕事のために日本に来ている外国人が交通事故にあって負傷するなどすることがあります。日本にいる外国人の場合、ずっと日本にいる可能性は低いですので、日本人の場合と異なって、逸失利益の算定などで問題が生じて争いになることがあります。
1 日本で裁判ができるのか
まず、損害賠償で逸失利益等が争いになった場合、交通事故にあった外国人が日本で裁判をできるかですが、民事訴訟法3条の3第8号で「不法行為があった地が日本国内にあるとき(外国で行われた加害行為の結果が日本国内で発生した場合において、日本国内におけるその結果の発生が通常予見することのできないものであったときを除く。)。」の場合には、日本で裁判ができるとされています。ですので、日本に滞在中の外国人が交通事故の被害者となった場合には、日本の裁判所で裁判を行うことができます。
2 日本の法律が適用されるのか
日本で裁判ができるとしても、交通事故の被害者は外国人ですので、日本の法律が適用されるとは限りません。外国の法律は、日本とは内容が異なりますし、被害者の国の法律を使用するのか、それとも日本の法律を使用するのかが問題となります。
(1) 法の適用に関する通則法
日本の裁判所に裁判の管轄がある場合に、どこの国の法律を使用して裁判を行うかを定めているものが「法の適用に関する通則法」です。
(2) 不法行為の場合
法の適用に関する通則法17条では、「不法行為によって生ずる債権の成立及び効力は、加害行為の結果が発生した地の法による。ただし、その地における結果の発生が通常予見することのできないものであったときは、加害行為が行われた地の法による。」とされています。加害行為の結果が発生した地とは、交通事故が発生した地と同じと解されていますので、被害者の外国人は、日本の民法等が適用されることになります。
(3) 相続が絡む場合
死亡事故の場合には、不法行為の損害賠償だけでなく、相続の問題も絡んできます。相続に関しては、法の適用に関する通則法36条は、「相続は、被相続人の本国法による。」と定めています。そのため、相続に関しては、交通事故で死亡した外国人の国の法律に従うことになります。
日本への観光客が年々増加しており、今後、外国人が被害者となる交通事故の争いが多くなるかもしれません。外国人が被害者の場合には、訴訟の管轄や適用される法律以外にも、逸失利益の算定など損害の計算についても特有の問題があります。
(弁護士中村友彦)