慰謝料は精神的な苦痛を損害として金銭評価したものであり、交通事故の場合、傷害慰謝料や後遺障害慰謝料として損害として認められています。交通事故に関する慰謝料は、定型的な裁判基準によって計算されていますが、事案によっては、諸事情を考慮し、増減額がなされます。加害者側の交通事故の態様(ひき逃げ等)によって、慰謝料が増額されることはよくありますが、被害者側の事情によって減額されることもあります。
1 傷病・治療に関する事情
入院の必要性に乏しいのに本人の希望によって入院していた場合や、通院期間が短いこと、通院頻度が低いなどの事情が慰謝料の減額事由になります。また、交通事故によって、軽度の神経症状の場合(むちうち症で他覚所見のない場合等)では、入通院慰謝料は通常の3分の2程度となります。
2 大阪地裁平成20年9月26日判決(自保ジャーナル1784号18頁)
通常の場合、被害者の行為態様は、過失相殺によって考慮されているので慰謝料の計算で考慮されることはありません。しかし、交通事故の後の被害者側の事情など、過失相殺では考慮できないようなケースでは、慰謝料の減額の要素となります。大阪地裁平成20年9月26日判決の事案は、中学三年生の交通事故の被害者がことさらに加害者に責任をなすりつけようとした事情を慰謝料の減額要素としました。この大阪地裁判決は、本人尋問や陳述書等の被害者の供述は信用できないとし、不当に交通事故の責任をなすりつけるものとして、傷害慰謝料や後遺障害慰謝料を裁判基準より1割減額しました。(弁護士中村友彦)