交通事故に遭って、車両が破損した場合、新車に買い替えるもしくは、修理するという方法があります。そして、修理できたとしても、修理しなければいけないわけではなく、交通事故の被害者が、新車に買い替えるということもあります。修理に要する費用というのは、交通事故に関する損害ですので、原則として損害賠償請求することができます。問題となるのは、修理することができたけれども、修理しない場合に、修理した場合にかかるはずだった消費税分を交通事故による損害として認めることができるかです。
1 否定した事例
岡山地裁平成18年1月19日判決(交民39巻1号40頁)では、「修理せず、これを下取りに出して新たな車両を購入したものと認められ、実際には修理費の支出をしていないから、交通事故と相当因果関係のある修理費相当額の損害としては、消費税分を除く修理見積額になるものと解される」として、消費税分を交通事故の損害として認めませんでした。
しかし、交通事故による損害は、不法行為による損害として、不法行為時である交通事故時を基準に計算されるのですから、理論的に上記岡山地裁判決はおかしいと言わざるをえません。
2 肯定した事例
東京地裁平成18年3月27日判決(交民39巻2号370頁)では、「仮に原告会社が原告車両を修理する場合には、消費税が発生するのであるから、消費税額を含めた396万3508円をもって、相当な修理代金とみるのが相当である」として、交通事故による損害として消費税分を認めました。 (弁護士中村友彦)