車両の修理費用の問題(修理方法)

  交通事故にあった場合に、自動車と自動車、自動車とバイクなどのケースでは、車両の修理について争われることがあります。通常、過失割合や、損傷箇所が交通事故と因果関係があるのかという争いが多いですが、事案によれば、修理費用の金額、修理方法が争われることがあります。普通、保険会社が出てきている場合には、アジャスターと呼ばれる人と修理工場の間で協定が結ばれるので、修理費用や修理方法が問題になることは少ないです。しかし、被害者車両が高級車・輸入車の場合には、金額が大きくなることや、美観等の要素により紛争になり、修理方法や修理費用について協定が結ばれないこともあります。

1 修理費用

 交通事故で車両に負った損害は物的損害です。損害として認められる修理費用は、原状回復の範囲で必要かつ相当な分に限られます。交通事故にあったから、この機会に特別な修理等をして、加害者の保険会社に支払わせようとしても認められません。

 仮に不必要や不相当な方法で修理をした場合には、損害賠償金として認められるのは、実際にかかった修理費用の一部になってしまいます。

2 修理方法例

(1)板金加工

 自動車でへこんでしまった部分をハンマーなどでたたく等して修理する方法です。高級車では嫌がる人が多いですが、一般的には損傷箇所がある車体のパーツを交換(部分交換)するよりも低額です。

(2)部品交換

 交通事故で損傷を受けた箇所のパーツごと交換してしまいます。板金加工と異なり、高くなります。車両の損傷状態や損傷箇所が多い場合には、板金加工では修理できず、部品交換によらなければならないことがありえます。

(3)塗装

 交通事故で塗装が剥げてしまったところを塗り直したり、板金加工等の修理後に色を塗る費用も修理費用として認められます。問題になるケースは、交通事故で損傷をうけた箇所だけを塗り直す部分塗装か、それとも車両全体を塗り直す全塗装が損害として認められるか争われるような事案です。

3 板金加工・部品交換についての裁判例

(1)大阪地裁平成19年12月20日判決(交民40巻6号1694頁)

 大阪地裁平成19年12月20日判決の事案は、交通事故で、ランボルギーニ・ディアブロSE30が損傷を受け、部品交換か板金加工修理かで争われました。自動車の車体にアルミニウム合金パネルが使用されており板金修理が困難なこと、板金修理により本来のボディーラインに変化を来すおそれがあることを理由として部品交換すべきという旨の修理見積を交通事故の被害者側は提出して争いましたが、上記大阪地裁判決は、自動車の車体にアルミニウム合金パネルが使用されているからといって、その損傷程度等を問わず、一律に部品交換の方法に拠るべしとすることはできないし、また、スーパーカーとしての本件自動車の独特の価値に鑑み、正規代理店の立場で修理見積りを行う限り、板金修理により本来のボディーラインに変化を来しかねない点を懸念するのもやむを得ないところであるが、損害算定の見地からは、むしろ評価損として斟酌すべき事柄といえるとして、部品交換を一部制限しました。

(2)東京地裁平成6年9月13日判決(交民27巻5号1220頁)

 東京地裁平成6年9月13日判決は、メルセデスベンツが追突事故で損傷を受けて、その修理方法について争われた事案です。リヤエンドフロアーや左リヤクオーターパネルを板金修理以上にこれを交換すべきことを認めるに足りる証拠はないと述べて、パネル等の外板部分について、原則として板金加工修理としました。

4 塗装・全塗装についての裁判例

(1)神戸地裁平成2年1月26日判決(交民23巻1号56頁)

 神戸地裁平成2年1月26日判決は、交通事故の被害者が、高級外車は、その価値の大きなウエイトは外観にかかっているから、破損部分の吹付塗装で足りる普通の国産車両の場合と異なり、当然全塗装を必要とするものというべきである等を述べて、全塗装の費用が交通事故の損害と認められるべきと争った事案です。事故車両はメルセデスベンツ500SELでした。

  上記神戸地裁判決は、「一部破損の場合の修理費は、破損箇所に対する相当程度の範囲に限られ、それ以外の箇所及び過剰修理分は除外されるものと解すべき」「原告が主張するような高級外車の外観的価値ないし威厳の保持という観点は、被害者の経済状態を被害を受ける前の状態に回復することを目的とし、かつ、損害の公平な負担を旨とする損害賠償制度の埒外というべきである。」と述べて、交通事故の被害者の主張を排斥しました。

(2)神戸地裁平成13年3月21日判決(交民34巻2号405頁)

 神戸地裁平成13年3月21日判決は、メルセデスベンツ500SLのオープンカーが交通事故で損傷を受け、塗装費用が損傷箇所部分に限定されるのか、それとも全塗装かで争われました。上記神戸地裁判決は、特殊塗装のため破損箇所だけの部分塗装では色合わせが困難であり、機能的には部分塗装で十分であるとしても、部分塗装であれば部分塗装したこと、すなわち事故車であることが時とともに一目瞭然となり、車両価値がそれだけ低下することが認められるから、全塗装が必要であると認めるのが相当あるとしました。

(弁護士中村友彦)

 

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