交通事故によってPTSD(心的外傷後ストレス障害)になった場合

   交通事故によって、受ける障害は骨折等の身体の損傷に限られず、精神的なものもありえます。精神的な障害のうち、高次脳機能障害といった脳の損傷による器質性精神障害に対し、PTSDは脳の損傷がなく、非器質性精神障害とされます。交通事故では、通常ではありえない特異な体験であり、恐怖を伴うケースが多いですから、事案によってはPTSDで被害者が苦しむことがありますが、そもそもPTSDに該当するのかや、該当したとしてどのように評価するか等問題が沢山あります。

1 PTSD

  PTSDは、Post-Traumatic Stress Disorderの略であり、心的外傷後ストレス障害ともいいます。症状として、フラッシュバック(意志に反して、交通事故時の体験が頭に浮かぶ)や回避症状などがあげられます。

  PTSDに該当するかどうかは、ICD-10の基準や、DSM-Ⅳの基準などを参考に、精神的な変調の重大性や、交通事故の重大性・凄惨性、肉体的な傷害などを考慮して判断されます。単に交通事故によって精神的に不安定になったというものでは認められません。

(1)ICD-10の基準

 ICDとは、死因や疾病の国際的な統計基準として、WHO によって公表されている分類で、疾病及び関連保健問題の国際統計分類ともいいます。そして、最新版である10版が、ICD―10として知られています。

 ICD-10基準では、PTSDに罹患したというには、「殆んど誰にでも大きな苦悩を引き起こすような例外的に著しく驚異的な、あるいは破局的な性質を持った、ストレスの多い出来事あるいは状況」が必要とされています。

(2)DSM-Ⅳの基準

 DSMとは、アメリカ精神医学会が発表したもので、精神障害/疾患の診断・統計マニュアルといいます。第4版がDSM-Ⅳとされてきましたが、2013年に最新版(Ⅴ)が発表されています。

 DSM-Ⅳの基準では、PTSDに罹患したというには、「実際に危うく死ぬ又は重傷を負うような出来事を、一度ないし数度、又は自分又は他人の身体的保全に迫る危険を患者が体験し、目撃し又は直面した。患者の反応は、強い恐怖、無力感又は戦慄を伴うものである」ことが必要です。

2 後遺障害

  交通事故でPTSDに該当した場合に、主に9級、12級、14級が非器質性精神障害の後遺障害として自賠責保険で認定される可能性があります。

等級

     後遺障害の内容

9級10号

通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、就労可能な職種が相当な程度に制限されるもの

12級13号

通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、多少の障害を残すもの

14級9号

通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、軽微な障害を残すもの

   なお、PTSDに該当しなくても(あるいは診断がなくても)、本人の精神状態によっては、非器質性精神障害で後遺障害の認定がされることはあります。

3 PTSDに関する裁判例

(1)東京地裁平成23年10月24日判決(交民44巻5号1387頁)

  東京地裁平成23年10月24日判決の事案は、61歳の女性が自転車で横断歩道を横断中に、自動車にはねられるという交通事故で、大腿骨頸部骨折等の傷害を負い、PTSDを発症したかが争われた事案です。

上記東京地裁は、DSM-Ⅳ-TRやICD-10の診断基準を満たさないことや交通事故から2年数か月以上経過してからの発症であること等から、直ちに症状をPTSDによる症状と評価することはできないとしてPTSDを否定しました。しかし、手術により身体機能の障害が明確になったころから不安感等の症状が現れたことや、日常生活が不便になったこと、2回目の手術が避けられない状況、骨頭壊死への不安等が原因となり、徐々にうつ状態が明確になったものと考えられ、原告の精神症状について、本件事故との相当因果関係を否定することは妥当ではないと述べ、症状の程度については,「通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、多少の障害を残すもの」として後遺障害第12級13号に該当するものと判断しました。

(2)大阪地裁平成11年2月25日判決(交民32巻1号328頁)

  大阪地裁平成11年2月25日判決の事案は、自動車同士の交通事故で、被害者が左鎖骨外側端骨折、腰部打撲・捻挫、右大腿部腹部打撲、頭部打撲・挫創等の傷害を負い、自賠責保険で14級の認定を受けていた事案です。

 上記大阪地裁は、PTSDの発症を認めたうえで、後遺障害として、軽易な労務、日常生活が辛うじて送るのが精一杯な状態が残ったとして、後遺障害等級第7級4号であるとしました。

  但し、上記大阪地裁は、心的外傷後ストレス障害は心因性の症状で、交通事故で悲しい体験をする人は原告だけではないが、それらの人全部が、全部、原告のような心的外傷後ストレス障害の後遺障害が残るわけではないことからすると、やはり原告本人の性格、心因反応を引き起こし易い素因等が競合していると推測できるとして、素因減額2割を行っています。

(弁護士中村友彦)

 

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