交通事故の損害としての入院雑費

   交通事故で生じた損害で典型的なものは、治療費、交通費、傷害慰謝料、後遺障害慰謝料、後遺障害逸失利益などですが、交通事故の態様がひどくて大怪我をして入院することになった場合に忘れてはいけないのは入院雑費です。

1 入院雑費

  入院雑費とは、入院中に治療費以外で支出を余儀なくされた費用のことです。具体的には、日用雑貨品購入費、栄養補給費、通信費、新聞代やテレビ賃借料などです。

  

2 相当性があれば損害と認められる

  入院雑費は相当性があるのであれば、交通事故の損害として認められます。この相当性の立証は煩雑で困難ですから、裁判実務では1日につき1500円位を個々の支出を立証することなく認定しています。交通事故の被害者は、入院雑費を1500円位の金額で請求するのであれば、入院の事実・入院の日数を立証すれば、その他について特段の立証をすることなく損害賠償を受けることができることになります(但し、事案によれば入院の必要性は争点になることがあります)。

3 自賠責保険の金額とは異なる

  自賠責保険では入院1日につき1100円とされ、裁判の基準より低額です。立証資料等で1100円を超えることを証明できれば、必要かつ妥当な額が認められます。なお、任意保険の基準でも1100円とされていることが多いです。

4 入院雑費に関する裁判例

(1)大阪地裁平成2年8月6日判決(交民23巻4号955頁)

   大阪地裁平成2年8月6日判決は、通常より高額の入院雑費を認定した裁判例です。上記大阪地裁は、入院の必要性は治療経過から明らかであり、交通事故の被害者の受傷内容、治療経過や、T病院は自宅から遠隔の地にあったため通信費等の雑費をより多く必要としたであろうことを考慮し、F病院につき一日当たり1300円、T病院入院中につき一日当たり2000円として、合計11万0500円の入院雑費を認定しました。

   但し、上記交通事故の被害者は41万8960円を諸経費として主張していましたが、上記大阪地裁は、本件受傷の治療のために必要であったとは認められず、必要性を肯定すべき範囲を認定すべき証拠も存在しないので、前記定額の雑費を超える部分については、その必要性を肯定することはできず、本件事故との因果関係を肯定することはできないとして排斥しました。

(2)東京地裁平成21年12月4日判決(交民42巻6号1576頁)

   東京地裁平成21年12月4日判決は、長期間の入院雑費を認定した裁判例です。一日1500円を基準に760日を認定しました。具体的には、交通事故日の翌日である平成16年11月5日から平成19年1月19日まで入院していたことが認められるところ、交通事故と相当因果関係ある入院雑費としては、交通事故日から症状固定日である平成18年12月4日までの760日間を基礎に、1日当たりの入院雑費を1500円として算定するのが相当であるとしました。

(弁護士中村友彦)

 

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