脾臓を損傷したり摘出を行った場合(脾臓喪失の後遺障害)

   交通事故の傷害で問題になるものは、手や足の骨の骨折や脱臼、首や腰のムチウチ症などが多いですが、内臓破裂等の損傷が生じて争われることもあります。自賠責後遺障害等級では、胸腹部臓器の障害として規定されており、その中の一つに脾臓があります。脾臓は、平成18年の障害基準の見直しで、等級が大きく下げられたこともあり、労働能力喪失率などで争われる可能性があります。

1 脾臓

  脾臓は、左上腹部の横隔膜の下あたりに位置し、大きさは成人の場合、長さ約10センチメートル、幅約6.5センチメートル、厚さ約3センチメートル程の内臓です。幼児の場合は、脾臓に造血作用があるとされていますが、大人の場合には造血作用は骨髄が代替しているので、脾臓の機能はよく分かっていません。感染を防御する抗体をつくったり、古くなった赤血球を血液から取り除いたりする機能があるなどと言われていますが、脾臓を摘出したとしても、生きていくことは十分に可能です。

2 後遺障害について

(1)自賠責後遺障害等級

    脾臓の摘出は、平成18年3月31日までに発生した交通事故については、後遺障害8級11号が認定されますが、平成18年4月1日以降に発生した交通事故については、13級11号(胸腹部の機能に障害を残すものに含まれる)と認定されます。

(2)脾臓喪失の後遺障害の争点

    脾臓は、人体に必須の器官というわけでないこともあり、脾臓を摘出した場合に後遺障害としてどのような影響があるか、労働能力喪失率が争われることがあります。逸失利益を認めない裁判例や、45パーセント(平成18年3月31日前の交通事故の事案)などの裁判例がありますが、自賠責基準が後遺障害13級11号(労働能力喪失率9%)に変更されたことで影響があるでしょうから、今後の裁判例の集積が待たれるところです。

3 脾臓の労働能力喪失率に関する裁判例

(1)大阪地裁平成6年8月30日判決(交民27巻4号1153頁)

  大阪地裁平成6年8月30日判決は、交通事故で外傷性脾破裂、結腸間膜左後腹腔血腫、左腎損傷、左肺挫傷、左第五・第八・第九肋骨骨折等の傷害を負い、脾臓摘出の後遺障害が残存した事案です。加害者側は、逸失利益を発生させるものではない旨を主張しましたが、上記大阪地裁判決は、脾臓が生体防御機能の一つとして生体を細菌感染から防御する等の機能を担っていることは公知の事実であるところ、医学的に完全な解明はなされていないものの、人体及び労働能力に軽いとはいえない悪影響をもたらし得る可能性があること、易疲労性が高まり、風邪を引きやすくなり、顔にむくみが出やすくなるなどの事情を考慮して、労働能力喪失率15%を認定しました。

(2)東京地裁平成24年5月9日判決(判時2158号80頁)

  東京地裁平成24年5月9日判決は、交通事故ではなく、医療事故の事案で、手術の際に腹腔内にタオルが残置されてしまったために、タオルを摘出する際に脾臓も摘出しなければならなかったというものです。上記東京地裁判決は、幼児ほどではないにせよ、易感染性、易疲労性が亢進する可能性があることを考慮して、自賠責後遺障害等級13級11号に相当し、労働能力喪失率を9%と認定しました。

4 脾臓の摘出を行っていない場合

  脾臓が損傷を受けた場合には、損傷の存在自体が脾臓の摘出が治療として適応とされていたことから、通常、脾臓の障害が問題になる場合には脾臓が摘出されています。しかし、脾臓の状態によっては摘出しないこともあり、その場合でも脾臓の喪失に相当するとして後遺障害が認定される可能性があります。

(1)東京地裁平成19年3月26日判決(自保ジャーナル4936号)

      東京地裁平成19年3月26日判決は、主に交通事故後の脾臓の後遺障害による労働能力喪失率が争われた事案です。上記東京地裁判決は、自賠責等級認定で「本件事故による脾損傷については,提出の医証上,外傷性脾損傷後の脾動脈塞栓に伴う嚢胞性病変の存在は明らかであり,提出の腹部画像上も脾臓に嚢胞性病変が認められます。さらに,血液検査結果における血小板数が極めて高いこと等を踏まえ,胸腹部臓器の障害について,その労働能力に及ぼす影響を総合的に勘案すれば,脾臓を摘出したものと同等に捉えることが適当と捉えられます。」とされたのと同様に、脾臓の損傷を脾臓の喪失と同視して後遺障害を認定しました。

   なお、上記東京地裁は、障害基準の改定前事案ですが、改定を考慮して労働能力喪失率を14%にとどめました。(弁護士中村友彦)

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