交通事故で被害者が傷害を負い、その治療のために、病院で入通院を行う際に近親者が付き添った場合に、付添看護費は現実に支出がなくても交通事故の損害とされています。
他方で、近親者が付き添った場合、当該近親者が仕事を休業することも考えられ、その損害と近親者の付添看護費との関係が問題となります。
1 損害の計算の仕方
(1)近親者の付添看護費
近親者が付き添った場合にも、交通事故の損害として認められています(最高裁昭和46年6月29日判決民集25巻4号650頁)。その額は、概ね入院1日あたり6500円程度、通院1日あたり3300円程度です。但し症状の程度や被害者の年齢により増額することはあります。
(2)近親者の休業損害
交通事故の被害者の近親者が有職者であり、当該近親者が仕事を休むなどして付添をしたことで、本来得られるはずであったのに得られなかった収入のことです。休業損害については、休業損害のページをご覧ください
(3)付添看護費と近親者の休業損害の調整
①原則・高い方
損害の計算においては、有職者が休業して付き添った場合、原則として、休業による損害と近親者の付添看護費の高い方の額が交通事故の損害とされます。
②例外・職業付添人の看護費程度に制限
しかし、近親者の休業による損害が高い場合でも、近親者の休業損害が職業付添人の費用より高ければ、損害拡大防止義務の観点から、職業付添人の付添看護費程度に制限されることが多いです。職業付添人を雇って、近親者は仕事をするべきだという考えです。
③さらに例外・事情によっては休業損害まで認められることがある
けれども、交通事故の被害者の年齢や負傷の程度などの事情によっては、職業付添人では近親者に代替できないようなこともあります。そのような場合であれば、近親者の休業損害が職業付添人を雇った場合にかかるであろう費用の額よりも高くても、近親者の休業損害を交通事故の損害として認めた裁判例(下記大阪高裁判決)もあります。
2 大阪高裁平成14年5月23日判決(例外的に休業損害相当額で計算)
大阪高裁平成14年5月23日判決は、交通事故の被害者が7歳と幼く、遷延的意識傷害となり自賠責後遺障害等級第1級3号と重度後遺障害が残存した事案です。両親は治療期間中、仕事を休み付き添いましたが、上記大阪高裁は、付添について両親に代替性が認められるかを考慮して、代替性が認められない期間について、例外的に休業損害相当額で損害を計算しました。(弁護士中村友彦)