道路交通法第2条1項8号では、車両とは、「自転車、原動機付自転車、軽車両及びトロリーバスをいう。」と定められています。そして、道路交通法第2条1項11号では、「自転車、荷車その他若しくは動物の力により、又は他の車両に牽引され、かつ、レールによらないで運転する車(そり及び牛馬を含む。)であって、身体障害者用の車いす、歩行補助輪等及び小児用の車以外のものをいう。」と規定されています。したがって、自転車は軽車両であり、車両として扱われることになります。
しかし、自転車は、車両とはいえ、走行方法等自動車とは異なるのであり、その運転には独自の注意義務が必要とされます。そして、そのような注意義務の一つとして、自転車が自転車を追い抜く場合が考えられます。通常バックミラー等がない自転車には、周囲の状況の認識可能性が自動車とは異なるのであり、交通事故を起こした場合の過失、過失割合については、自転車特有の事情を考慮する必要があります。
1 東京地裁平成13年9月28日判決(交民34巻5号1342頁)
東京地裁平成13年9月28日判決は、自転車同士の衝突による交通事故ですが、自転車が前方自転車を追い越す際に要求される一般的な義務を示しており、以下のように述べています。結論としては、上記東京地裁は、追い越した側が交通事故の被害者として訴えたものですが、追い越した側に100%の過失を認めました。
(判示)
(1)「原告は、被告の死角である後方から被告に接近し、そのすぐ脇を通過しようとしたのであるから、原告としては、被告の姿勢や動作等のみならず、被告の周辺の交通状況を十分に注視した上(原告が被告のすぐ脇を通過しようとする際、原告車の接近を知らない被告がどのような動作に出るのか、その周囲の交通状況はどう変化するのか、等について予測し、留意しなければならないからである。)、原告車が被告の右脇を通過することを知らせてその注意を促すために、呼び鈴を鳴らしたり、大きな声をかけたりするなどの警鐘措置をあらかじめとり、かつ、自らは、徐行したり又は状況次第では自転車から降りて押して歩いたりするなどの安全な運転方法で、原告車を運転すべきであった。」
(2)「このような運転方法は、自転車を運転する者が歩行者や他の自転車をその後方から追い越そうとする場合に、一般的に要求されるものというべきである。しかるに、原告は、かかる運転方法をとらなかった上に、前示のように、自ら、被告の身体及び被告車に衝突させて転倒するに至ったのであるから、本件事故を発生させた責任は、専ら原告にあるといわざるを得ず、原告は、被告に対して、本件事故の発生について過失責任を追及することはできない。」
道路の状況や先行自転車の態様等の事情が異なれば、必ずしも後続の追い越し自転車の過失が100だとはならないと思われますが、上記東京地裁判決の判示は、大いに参考になるでしょう。(弁護士中村友彦)
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