海外での治療費

日本で交通事故に遭い受傷し、その治療を外国で行った場合、日本でも治療ができるわけですから、その治療費が交通事故による損害として因果関係が認められるかは、必要性や相当性が厳しく判断されることになります。 

1 問題となるケース

   大きく分けると以下の2つのケースです。

 ① 外国人が日本で交通事故に遭い、母国へ帰国後、母国の病院で治療したケース

  ② 日本人が日本で交通事故に遭い、その治療を海外で行ったケース 

2 大阪地裁平成14年2月7日判決(上記①のケース)    

上記①のケースですが、英国人が交通事故で頸椎捻挫等を負い、母国である英国で、麻酔を施さないマニピュレーション(徒手整復法などの用手的療法)を行い、その治療費が問題となった事案として、大阪地裁平成14年2月7日判決(交民35巻1号206頁)があります。 この大阪地裁判決では、英国における治療費としては、MRI撮影を行い、神経外科医である医師の診察を受けるのに要した費用については相当性があるが、マニピュレーションに要した費用は相当な交通事故による損害とは認められないとしました。その理由としては、麻酔を施さずに行うマニピュレーションについては、施術を行うのが医師ではなく整骨療法士であること、その施術方法及び効果に関する医学的裏付けが必ずしも明らかでないこと、日本国内においては採用する病院がほとんどなく、原告が相談した日本の病院の医師も原告の症状に対する適用については否定的な意見を述べていること、英国の医師が有効性を示唆したのはあくまでも麻酔下でのマニピュレーションについてであり、麻酔を施さずに行うマニピュレーションを選択したのは原告自身の判断にすぎないこと、麻酔を施さずに行うマニピュレーションを行ったことにより、原告の場合、一時的に可動域の改善が認められたこともあったが、効果は長続きしなかったことが認められることなどの事情を考慮して、マニピュレーションの費用については交通事故と相当因果関係のある損害とは認めがたいというものでした。 

3 東京地裁平成15年5月8日判決(上記②のケース)   

  上記②のケースですが、日本人が、交通事故により頸椎捻挫等の傷害を負い、歩行障害等の後遺障害の残った被害者がアメリカに渡航して治療を受けた事案として、東京地裁平成15年5月8日判決(交民36巻3号314頁)があります。この東京地裁判決では、療等の内容が当時日本で受けられない内容のものであったことを認めるに足りる証拠はなく、かえって、アメリカの病院における治療等は、日本においても一般的である温熱療法、牽引、電気刺激、冷湿布及び歩行訓練等の理学療法を中心としたものであったことが認められるとして、アメリカで治療をする必要性があったと認定することは困難であり、またアメリカの病院における治療費は、その内容や期間を前提に日本における治療費と比較すると相当に高額であることなどから、アメリカでの治療費のうち160万円(約5割)の限度で交通事故と相当因果関係のある損害としました。 (弁護士中村友彦)

 

 

 

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