交通事故により傷害を負い、治療のために入院することになったとき、その治療費は、交通事故による損害として認められます、ただし、大部屋ではなく、個室(特別室)を使用した場合には、その差額の室料は原則的に認められませんが、症状が重い場合などには例外的に認められることがあります。
1 症状が重篤なケース
山口地裁平成2年9月18日判決・交民23巻5号1182頁では、交通事故により脳挫傷・遷延性意識障害・四肢麻痺の後遺障害を負った事案で、将来にわたり入院生活を余儀無くされ、外気に当たることによって感染症に罹患する恐れがあることから、医師の指示により個室で療養生活をする必要があり、個室ベッド費用として年間約90万円、症状固定の日から原告の平均余命期間である61年間分を認めました
2 空き部屋がなかったケース
大阪地裁平成18年7月31日・交民39巻4号1129頁では、交通事故により左下腿骨折及び左脛骨高原骨折を負った事案で、大部屋が満床であったあった3日分の個室料を認め、それ以降の19日分については、大部屋が満床という状況は解消され、大部屋に入ろうと思えば入れたとして否定しました。
(弁護士 中村友彦)