交通事故によって複視の症状が残存した場合

  交通事故によって顔面を強打した際、眼球等を負傷するなどして、眼に運動機能障害が残存することがあります。その中の症状として、複視があり、複視が残存した場合には後遺障害認定の対象となります。

1 複視

  複視とは、物が二重に見える状態です。眼筋が麻痺したり、眼球が陥凹することによって生じ、複視が生じる方向も違うことがあります。片目を隠したときに2重に見えるのが、片眼性複視であり、両目で見た時に二重に見えるのが両眼性複視です。

2 後遺障害等級認定

  複視について、交通事故における自賠責保険の後遺障害認定基準は以下の一覧のとおりです。

等級

後遺障害の内容

第10級2号

正面を見た場合に複視の症状を残すもの

第13級2号

正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの


(1) 複視の症状を残すもの

 ①本人が複視のあることを自覚していること、②眼筋の麻痺等複視を残す明らかな原因が認められること、③へススクリーンテストにより患側の像が水平方向又は垂直方向の目盛りで5度以上離れた位置にあることが確認されたこと、が必要とされています。

 但し、③に関しては、へススクリーンテストがなかったとしても、眼球の陥凹等の事情を考慮して、自賠責保険は複視を認定することはあります。

(2) 正面を見た場合に複視の症状を残すもの

 へススクリーンテストにより正面視で複視が中心の位置にあることが確認されたものを言います。へススクリーンテストにより正面視で複視の中心の位置にない場合(へススクリーンテストがない場合を含む)は、正面以外を見た場合に複視の症状を残すものと扱われます。

(3) へススクリーンテスト

 ヘススクリーンテスト(Hessスクリーンテスト)とはヘスコージメーターという検査

機器を使って、指標を赤緑ガラスで見たときの片眼の赤像、他眼の緑像から両眼の位置ずれを評価する検査方法のことです。

3 複視に関する裁判例

(1) 大阪地方裁判所平成27年6月16日判決(平成25年(ワ)第12791号、平成26年(ワ)第342号、平成26年(ワ)第4767号)

 歩行者が横断歩道上で、自動車に轢かれ、右眼窩底骨折等の負い、正面視以外での複視の症状などが残存した交通事故の事案です。自賠責保険では、正面視以外で複視が残存したとして、複視に関しては後遺障害13級2号が認定されていました。

 加害者側は、眼筋の麻痺等複視を残す明らかな原因も、ヘススクリーンテストにより患側の像が水平方向または垂直方向の目盛りで毎回5度以上離れた位置にあることも確認されているわけではないから、後遺障害として認定できないとして、複視の後遺障害該当性を争いました。上記大阪地裁判決は、右眼窩底骨折の事実や治療経過を考慮して、自賠責の認定どおり、後遺障害13級2号を認定しました。

(2) 京都地方裁判所平成26年10月31日判決(平成22年(ワ)第4169号)

 自宅車両出入口から道路に出ようとしていた自動車が、自転車と衝突した交通事故の事案です。複視が残存しましたが、自賠責保険の後遺障害認定では非該当とされ、一方で、全国大学生活協同組合連合会共済センターの後遺障害認定では13級相当と判断された事案です。

   上記京都地裁判決は、「原告に視力低下や複視が現れたのは、本件事故から約1年後の平成18年6月以降であり、眼底、対光反射に異常はなく、原因となる疾患が検出されていないことにかんがみれば、視力低下や複視を本件事故と相当因果関係を有する後遺障害と認めることはできない。」として、複視の後遺障害該当性を否定しました。

(弁護士中村友彦)

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