示談成立後に生じた後遺障害

 交通事故にあった場合、怪我をしたのであれば、治療のうえ、最終的に損害を計算して示談を行います。示談の際には、後遺障害についても、自賠責保険で等級認定をうけるなどして損害として計算します。通常、示談書には、債権債務がないことを確認し、裁判上・裁判外を問わず請求しない旨が記載されていますので、示談成立後には加害者に対し損害賠償請求はできなくなります。

 しかし、後遺障害の中には、示談成立時点ではまだ具体化していなかったり、身体の成長とともに生じてくるようなものもあります。このような示談成立後に生じた後遺障害について、損害を請求することができないのかが問題となることがあります。

1 最高裁判所昭和43年3月15日判決(判例タイムズ218号125頁)

 最高裁判所昭和43年3月15日判決は、交通事故で左前腕骨複雑骨折を負ったものの、事故から10日を経ないうちに示談してしまい、その後手術が必要になり、最終的に関節を廃する機能障害が残存した事案です。上記最高裁判決は、「全損害を正確に把握し難い状況のもとにおいて、早急に小額の賠償金をもって満足する旨の示談がされた場合においては、示談によって被害者が放棄した損害賠償請求権は、示談当時予想していた損害についてのもののみと解すべきであって、その当時予想できなかった不測の再手術や後遺症がその後発生した場合その損害についてまで、賠償請求権を放棄した趣旨と解するのは、当事者の合理的意思に合致するものとはいえない」と述べて、示談成立後の請求を認めた原審判決(大阪高等裁判所昭和39年12月21日判決・判例タイムズ173号)141頁)を維持しました。

2 後遺障害が悪化した場合

 後遺障害を損害として評価して示談したものの、示談成立後にその後遺障害が悪化することがあります。このような場合、因果関係や示談成立時の予測可能性が争いになります。

(1) 東京地方裁判所平成25年5月29日判決(自保ジャーナル1902号59頁)

 東京地方裁判所平成25年5月29日判決は、交通事故で脳挫傷、肺挫傷、胸骨骨折、肋骨骨折等の傷害を負い、上肢脱力と知覚障害について後遺障害12級の認定を受けて、示談をした事案です。示談から数年後にけいれんといった症状が出現し、示談から6年を経過して、高次脳機能障害により後遺障害7級の認定を受けました。

 上記東京地裁は、示談の効力について、示談成立当時、高次脳機能障害の症状が発症・増悪するか、症状固定の見込時期はいつか、残存する後遺障害がどの程度になるか等を予想することは困難であったというべきであるから、示談が高次脳機能障害による損害を含めて合意されたものと解することはできず、後遺障害等級表12級の右上肢脱力と知覚障害による損害について合意されたにとどまると解するのが相当であって、高次脳機能障害による損害にまで本件示談の効力は及ばないとしました。

(2) 東京地方裁判所平成19年2月15日判決(平成28年(ワ)第5220号事件)

 東京地裁平成19年2月15日判決は、中学生がクラブ活動で路上を走行していたところ、被害者に衝突して転倒させ、被害者が頭蓋骨骨折,脳挫傷及び外傷性くも膜下出血の傷害を負った事案です。示談成立後の後遺障害に関する損害が争われました。上記東京地裁は、「原告には、本件示談の後、本件示談において本件事故の後遺症であると確認されていた頭痛、異常臭気及び眩栄(ふらつき感)以外に、感覚鈍麻、不随意運動、記銘力障害等の症状が現れたということができる。」としたうえで、「しかし、被告の損害賠償責任を認めるためには、これらの症状と本件事故の間に因果関係があると認められることが必要である(このほか、本件示談当時における予見可能性等も要件となり得るが、この点はさておく。)。」としました。
 そして、因果関係の有無について、原告を本件事故後から診断してきた医師は本件示談後に現れた原告の症状と本件事故の関係につき「ある程度関係があるのではないか」と述べるにとどまること、本示談は事故から約1年4か月を経過した後に成立したものであるが、頭部に外傷を受けてからそのような期間を経過した後になって初めて感覚鈍麻、不随意運動等の症状が現れることがある旨を示す的確な証拠は何ら提出されていないことや、訴えの提起時76歳であることを考慮すると、示談後に現れた原告の症状と本件事故の間に因果関係を認めるに足りる証拠はないと判断するのが相当であると判断し、因果関係を認めませんでした。

 

 示談も契約ですので拘束力があります。ただ、文言や示談に至る事情などを考慮し、当事者の意思を合理的に解釈するなどして、示談後の後遺障害に関する損害賠償請求が例外的に認められる可能性はありますが、年月が経っているなどで中々大変です。当初の示談を慎重に行う必要があります。

(弁護士中村友彦)

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