通学途中の自転車事故で学校が責任を負うか

 学校によっては禁止されていることもありますが、通学の際に、中学生や高校生が自転車を使用していることがあります。この自転車の通学の際、歩行者等を引いてしまったりして、交通事故が生じることがあります。加害者が中学生や高校生の場合、民法の712条の責任能力の有無が概ね12歳前後が境目であることを考えると、本人に交通事故の責任が認められるでしょう。このような場合、本人に責任が認められたとしても、通常資力がありませんので、他への責任追及の検討を要することになり、その検討する責任追及先の一つに通学先の学校があげられます。

1 民法709条による監督責任

 交通事故を起こした加害者に責任能力がなければ、民法714条の監督責任が問題となりますが、中学・高校生であれば、一般的に責任能力があるとして、714条の適用とはなりません。そのため、民法709条に基づき、学校側に過失があるかを考え、過失が肯定される場合に損害賠償請求を行うことができることになります。しかし、この709条の過失が学校側にあることが肯定されるのは、極めて難しいです。学校側が自転車通学中の交通事故を予見できたにもかかわらず、これを回避する義務を怠ったために事故が生じたと言えなければならないからです。なお、学校が国公立の場合には、国家賠償法1条1項による損害賠償請求が問題となります(これも、公務員の過失が要件となりますので、通常の場合、要件を満たすのは困難であると思われます)。

2 学校側の責任が問題となった裁判例

 通学中の自転車事故の裁判例は現在のところ、見当たりませんでした。但し、校外での授業中、高校生が自転車を運転して、歩行者に衝突して死亡事故を起こしたという裁判例(東京高等裁判所平成2年2月28日判決東京高等裁判所判決時報民事41巻1~4号16頁)があります。

 上記東京高裁判決は、予見可能性について「担当教諭の巡回、監視も十分でないところで行われるものであったから、生徒の中には、解放感から、授業時間中も、写生に専念せず、自転車に乗るなどして遊びに耽る者も出ることは十分に予想されたが、そのことから直ちに、生徒が、授業時間中に、本件公園内等で自転車を運転して、本件事故のごとき人身事故を起こすことまで予想し得たと解することは困難である。」として予見可能性を否定しています。

 さらに、回避義務についても「本件事故の発生を防止するためには、・・・・同校の生徒に対し、交通事故の発生防止に関する前記認定のごとき一般的な教育、指導又は注意を行っただけでは足りず、更に被控訴人らの主張するごとく、美術の校外写生授業の際には、生徒が自転車で本件公園等へ出掛けることを禁止すべきであり、もしそれを許可するのであれば、特別の注意を払って生徒を引率、監督すべき注意義務があったとまで解することはできないし、また、その他に本件事故の発生防止のために必要な特別の注意義務があったとも解することはできない。」として回避義務違反も認めていません。

 上記東京高裁判決の事案が授業中であり、学校側の支配が通学中よりも及んでいるにもかかわらず、学校側の責任が否定されていることとの比較からしますと、通学中の交通事故で学校側の責任を問うことができるのは余程特殊なケースに限られるかもしれません。

 

 中高生による自転車事故であっても、事故態様等の事情によっては損害額が大きなものになることはありえます。通常、通学で自転車を使用する場合には、自転車保険の加入が必須とする学校が多いと思いますが、必ず保険は加入しておくべきです。

(弁護士中村友彦)

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