自転車を運転しながら犬を散歩

 自転車を運転しながら、飼い犬を散歩させている人を見かけることがあります。自転車を漕ぎながら散歩させている人は、飼い犬のリードを手に持って片手で運転したり、自転車のハンドルにリードをつけて運転していることが多いです。しかし、このような態様の運転は危険ですし、交通事故を起こせば刑事処罰の対象になったり、自転車運転者講習の対象となる危険運転行為とされることがあります。

1 道路交通法違反

(1)道路交通法70条

 道路交通法70条では、「当該車両のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。」とされていますが、この規定は安全運転義務を定めたものとされています。飼い犬のリードを手に持って片手で運転することや、ハンドルにリードをつけて運転する態様は、犬の行動如何等によれば、ハンドルの操作が不十分に交通事故を起こしかねず、危険なものだと言えますので、道路交通法違反になると思われます。

(2)道路交通法71条6号

 道路交通法71条6号は、「道路又は交通の状況により、公安委員会が道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要と認めて定めた事項」を、車両を運転する際に遵守しないといけないとしています。大阪の場合、大阪府道路交通規則13条(2)で、「かさをさし、物をかつぎ、又は物を持つ等視野を妨げ、若しくは安定を失うおそれがある方法で自転車を運転しないこと。」とされており、安定を失うおそれがある方法として、リード等を持って自転車を運転するなどといった行為 は評価され、道路交通法違反になると思われます。

(3)自転車運転者講習

  改正道路交通法の施行により、自転車運転者講習が実施されることになりました(道路交通法108条の2以下)。自転車運転者講習は、道路交通法施行令41条の3に  規定された危険行為(14類型)にあたる行為を反復した者に対して、自転車の運転による交通の危険を防止するために公安委員会の受講命令により実施されます。危険行為の中には、安全配慮義務違反である道路交通法70条違反が含まれていますので、リードを持って犬をさせながら自転車を運転した場合、危険行為として摘発される可能性があります。

2 刑事処分

(1)道路交通法

 道路交通法119条9号違反として3ヶ月以下の懲役又は10万円以下の罰金の可能性や、120条9号違反として5万円以下の罰金の可能性があります。

(2)刑法

 交通事故を起こし、相手方に怪我を負わせてしまったような場合には、重過失致死傷罪として5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金(刑法211条)や、過失致傷罪として傷害の場合に30万円以下の罰金又は科料・死亡の場合に50万円以下の罰金(刑法209条210条)の可能性があります。

 自転車事故で、被害者側が気をつけないといけないのは、過失傷害罪は親告罪で、告訴時効6ヶ月ですから、加害者側に刑事処分を望む場合には告訴を要します。相談に来られた際には告訴時効が経過していることが散見されますが、このような場合、刑事記録がとれず、事故態様の資料の収集が困難になります。 

3 民事上の過失相殺

 交通事故の際に過失割合についての一定の基準を記載した『別冊判例タイムズ38号 民事交通事故訴訟における過失相殺率の認定基準』では、傘をさすなどしてされた片手運転等が「著しい過失」とされておりますので、飼い犬のリード持って運転するなどして交通事故にあい、被害者になった場合には、相応の過失相殺がなされると思います。

(弁護士中村友彦)

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