交通事故で受ける傷害には様々なものがありますが、その中の一つにTFCC損傷があります。TFCC損傷は、自転車やバイクを運転している時に、自動車に轢かれるなどして転倒し手をつくことによって等で生じることがあります。TFCCとは、triangular fibrocartilage complexの略であり、三角繊維軟骨複合体ともいいます。三角繊維軟骨と周囲の組織からなり、手関節の尺側で尺骨と手根骨の間に存在します。
1 外傷性TFCC損傷
TFCC損傷は、加齢に伴って生じる変性TFCC損傷もありますが、無症状のことが多く、治療の対象になることは少ないです。一方で、自転車の交通事故などで生じる外傷性TFCC損傷では、手関節尺側を動かした時に痛みがありそれが持続したり、関節の可動域が制限されるといったものです。交通事故による転倒で、掌をついたり、手の関節をひねった後に、手関節尺側部痛が生じた時には、外傷性TFCC損傷を疑います。なお、尺側とはくるぶし側のことです。
治療は、固定し保存治療を行うか、程度が大きければ手術することもありえます。
2 検査
MRIや、関節造影や手関節鏡といったものが有用です。MRIでは、関節鏡や関節造影では判明できないTFCC内部の損傷も把握できます。
単純XP撮影では、TFCC損傷は確認できませんので注意が必要です。当事務所がやった案件でも、単純XP撮影しかしておらず、主治医も痛みは単なる打撲と言っていましたが、他院でMRI検査をしてもらったところ、TFCC損傷が判明したことがあります。
3 後遺障害等級認定
治療を続けても、もはや治らない状態になれば後遺障害の等級の認定をうけることになりますが、TFCC損傷は、神経症状もしくは損傷の程度が大きければ可動域制限で後遺障害が認定されることがあります。
(1)神経症状
MRIなどの検査が他覚所見とされるかによりますが、後遺障害等級第12級13号か14級9号の可能性があります。
(2)可動域制限
可動域の制限の程度により異なります。後遺障害等級12級6号、10級10号か8級8号の可能性があります。
(3)労働能力喪失率について
TFCC損傷で後遺障害が残存すると、障害の部位が手関節という労働にあたって必要な部位ということもありますので、単純に労働基準局通達にある労働能力喪失率表を適用するのは不適当なことがありますから、より高い労働能力喪失率であることを主張していくべきでしょう。
TFCC損傷は、初めにXP撮影しか行っておらず、長期間経過後にMRIを撮影して判明したとしても、期間の経過により交通事故との因果関係が問題になり、争われることがあります。ですから、受傷後、単純に捻挫や打撲と診断されたとしても、検査の方は受傷直後からしっかりとやっておくべきです。(弁護士中村友彦)