眼球の調節機能障害(交通事故による後遺障害)

   交通事故で顔面を道路に強く打ち付ける等して、重大な傷害を負った場合、治療を行っても最終的に眼に後遺障害が残存することがあります。眼の後遺障害について、自賠責後遺障害等級表では、眼球やまぶたについて定められ、そのうち眼球に関する障害の一つに眼球の調節機能の障害があります。

1 眼球の調節機能障害

  交通事故で眼球の調節機能に障害が残存した場合、自賠責後遺障害等級の一覧は以下のとおりです。

等級

内容

第11級1号

両眼の眼球に著しい調節機能障害を残すもの

第12級2号

1眼の眼球に著しい調節機能障害を残すもの

 

2 著しい調節機能障害とは

  眼球の調節機能は水晶体で行われ、水晶体の膨脹などにより光の屈折力がかわり、物を見た時にピントが合うことになります。このピントを合わせるという、調節力が交通事故により通常の2分の1以上以下になった場合に『著しい調節機能障害』と認められます。

(1) 調節機能の検査

遠方と近方に置かれた視標に、ピントが合うまでの時間の長さから調節の障害を診断する装置であるアコモドポリレコーダーで検査します。調節力の単位はジオプトリ(D)で表示されます。

(2)調節力の2分の1

 ①両眼に障害が発生した場合

  障害が発生していない健眼の調節力(ただし1.5D以上を必要とする)と比較します。

 ②片眼に障害が発生した場合

  年齢別を示す以下の表の値との比較によります。

年齢

調節力

年齢

調節力

15

9.7

40

4.4

20

9.0

45

3.1

25

7.6

50

2.2

30

6.3

55

1.5

35

5.3

60

1.35

 

 

65

1.3

 

(3)交通事故により水晶体を摘出した場合

 交通事故の負傷で水晶体を摘出した場合、完全に調整力が失われますから『眼球に著しい調節機能障害を残すもの』としての取り扱いがされています。

3 裁判例

  因果関係や労働能力喪失率などが争われることが多いです。

(1)東京地裁平成元年8月22日判決(交民22巻4号925頁)

   東京地裁平成元年8月22日判決(交民22巻4号925頁)は、交通事故で頸椎捻挫、左後頭神経障害、左上肢不全麻痺、腰椎捻挫、外傷性視力障害、求心性視野狭窄、調節力障害、輻輳不全等の傷害を受け、後遺障害併合11級(調節機能は11級1号の認定)とされたものです。

上記東京地裁は、因果関係は認めましたが、「眼鏡を使用することにより日常生活上格別の不都合を感じない状態になっており、既に相当程度に機能の回復又は日常生活に対する順応が進んでいるものと認めることができる」として、労働能力喪失率を10%に制限しました。

(2)大阪地裁平成13年3月23日判決(交民34巻2号428頁)

  大阪地裁平成13年3月23日判決(交民34巻2号428頁)は、交通事故で頭部外傷Ⅱ型、頸部捻挫、右肘関節捻挫挫傷、右手打撲挫傷、右上肢不全まひなどの傷害を負った事案です。相当因果関係や労働能力喪失期間が争われました。

  労働能力喪失期間については、「自然治癒する症例も多いとされているが、そうでない症例もあり、本件では、原告を診察した医師は回復が期待できないと診断し、実際、事故から四年以上経過した現在でも、著しい調節障害が認められるから、労働能力喪失期間は六七歳までと認められる。」として49年間の喪失期間を認めました。

    また、因果関係については、むち打ちによる調節障害であり、治療法はなく、将来も回復しないと診断があるなどから認めましたが、他方で、発症した原因が本件事故だけかどうかを検討する必要があるとしました。具体的には、「眼底等に異常はなく、むち打ちによるとされていることは、要するに、明確な他覚所見を欠いていると理解せざるを得ない。つまり、本件事故によって、神経や組織が損傷を受けたとまでは証拠上認めがたい。そして、一般的に、むち打ちの事例では、本人の心理的な負担が、その症状を悪化させることも多く、本件においても、症状の経過や通院の状況を検討すると、事故後、徐々に症状が増悪していったと認められ、学校や家庭内での環境や人間関係を原因とする精神的心理的な負担、さらには思春期特有の不安や悩みが症状を悪化させたと思われる。さらには、原告が本件事故後、眼の異常を感じたときに、きちんと通院せず、適切な治療を受けなかったことも、症状の悪化を招いたと認めざるを得ない。」として、本件事故と両眼の調節障害との間に相当因果関係を認めるとしても、損害の公平な負担をはかるために、後遺障害分の損害を40%の割合で減額しました。

(弁護士中村友彦)

 

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