昨今の健康志向もあってか、自転車を利用する人が増加しました。自転車を利用する人の増加に伴い、自転車に関する交通事故が増加しつつあります。しかし、保険制度が確立している自動車による交通事故賠償の仕組みと異なり、自転車による交通事故の場合はまだまだ未整備です。自転車による交通事故の被害者は、適正な賠償が得られず泣き寝入りしたり、賠償を得るために多大な労力を費やし紛争が長期化するような状態にあることが多いです。もちろん、自転車にも保険制度はありますが(自転車事故のページ)、自動車における自賠責保険と異なり、強制保険はなく、保険に未加入のケースが大半です。
そのような自転車による交通事故の被害者の泣き寝入りや紛争の長期化を防ぐことを目的として、平成25年2月26日に設立されたのが「自転車ADRセンター」です。一般財団法人日本自転車普及協会により設立されたもので、自転車事故に特化したものとしては、全国で初です。
1 紛争解決の流れ
- 自転車ADRセンターへの申立て
↓ - 自転車ADRセンターから事故の相手方へ通知。相手が応諾しなければ、手続き打切り。
↓ - 3人の調停委員が双方から事情聴く
↓ - 和解案を提示等
↓ - 合意・調停継続・手続き打切り
2 対象となる紛争の範囲
以下の3パターンです。
- 自転車と歩行者との間の事故
- 自転車と自転車との間の事故
- 自転車による器物の損壊
自転車の構造上の欠陥を理由とする自転車製造業者又は販売業者に対する損害賠償責任に関する紛争は取り扱っていません。
3 調停委員
弁護士又は自動車関連団体の役員若しくは職員で自転車の事故防止又は安全啓発に係る活動に3年以上従事した経験のある者が担当します。
4 費用
- 申立手数料
申立人は申し立て時に5,250円(消費税込み)を自転車ADRセンターに納付します。相手方は納付する必要がありません。
- 和解成立料
和解が成立して調停が終了した場合、和解によって当事者が得られる経済的利 益を基準として、和解成立料を支払う必要があります。その負担の割合は、当事者の和解の合意の中で決めます。
経済的利益が100万円までの部分 | 10万円までごとに3,000円 |
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経済的利益が100万円を超え500万円までの部分 | 20万円までごとに3,000円 |
経済的利益が500万円を超え1000万円までの部分 | 50万円までごとに6,000円 |
経済的利益が1000万円を超え10億円までの部分 | 100万円までごとに9,000円 |
(弁護士 中村友彦)